飲食店営業許可申請

飲食店営業や喫茶店営業を始めるには、食品衛生法等で定めている営業許可を得る必要がありますが、保健所との事前相談や「営業設備の大要・配置図」作成など、何かと手間がかかります。申請関連業務は行政書士に任せ、本来の開店準備に力を注いでください。

営業許可申請の流れ

1、保健所への事前相談

施設の内装工事着工前に設計図面・完成予定図面などを持参し、保健所の食品衛生担当者に事前相談を行います。完成した後で施設が要件を満たさず許可が下りないと言ったことを避けるためです。施設ごとの食品衛生責任者も早めに決めておきましょう。また貯水槽使用水(タンク水)や井戸水等を使用する場合、水質検査が必要ですのでこちらも早めに済ませておきましょう。

2、申請書類の提出


申請に必要な書類は
 ①営業許可申請書(1通)
 ➁営業設備の大要・配置図(2通)
 ③許可手数料
 ④登記事項証明書(法人の場合)
 ⑤水質検査成績書
 ⑥食品衛生責任者の資格を証明するもの
工事完成予定日の10日前をめどに提出します。申請の際、工事の進行状況の連絡方法や検査日程の相談をします。東京都の新規申請手数料は18,300円となります。

3、施設完成の確認検査

検査確認の際は立会いが必要となります。万一、施設基準に適合しない場合は許可になりません。不適合事項に関し改善し、改めて検査日を決めて再検査を受けます。

4、許可書の交付

施設基準の適合確認後、許可書が作成されますが交付までには数日かかります。開店日についてはあらかじめ打合せしておきましょう。基本的に許可書が交付されるまでは開店できませんので注意しましょう。

5、営業開始

営業許可書受領の際は印鑑が必要となります。食品衛生責任者の名札を見やすい場所に掲示します。名札の大きさは縦20㎝以上、幅10㎝以上。食品衛生責任者は、調理師、栄養士等の資格を有する方のほか、食品衛生責任者の資格取得のための講習を受講することによりなることができます。

営業施設の基準

営業施設の基準には、飲食店のみならず、食品製造業なども含めた共通基準と、業種ごとに定められた特定基準があります。多くの事項に関し定められているので、この基準をクリアすることが許可取得のポイントとなります。項目数が多いのですが以下に挙げていきます。(東京都の場合)

1、営業施設の共通基準

飲食店営業だけでなく、自動販売機以外のすべての食品関係営業に必要な施設の基準です。
■営業施設の構造
[場所] 清潔な場所を選ぶ。
[建物] 鉄骨、鉄筋コンクリート、、木造造りなど充分な耐久性を有する構造。
[区画] 使用目的に応じて、壁、板などにより区画する。
[面積] 取扱量に応じた広さ。
[床]  タイル、コンクリートなどの耐久性材料で排水が良く、清掃しやすい構造。
[内壁] 床から1メートルまで耐久性で清掃しやすい構造。
[天井] 清掃しやすい構造。
[明るさ] 50ルクス以上。
[換気] ばい煙、蒸気等の排除設備(換気扇等)。
[周囲の構造] 周囲の地面は、耐水性材料で舗装し、排水が良く、清掃しやすい。
[ねずみ族、昆虫等の防除] ねずみや昆虫などの防除設備。
[洗浄設備] 原材料、食品や器具等を洗うための流水洗浄設備。 従業員専用の流水受槽式手洗い設備と手指の消毒装置。
[更衣室] 清潔な更衣室又は更衣箱を作業場外に設ける。
■食品取扱設備
[器具等の整備] 取扱量に応じた下図の機械器具及び容器包装を備える。
[器具等の配備] 移動し難い機械器具等は、作業に便利で、清掃及び洗浄をしやすい位置に配置する。
[保管設備] 原材料、食品や器具類等を衛生的に保管できる設備。
[器具等の材質] 耐水性で洗浄しやすく、熱湯、蒸気又は殺菌剤等で消毒が可能なもの。
[運搬具] 必用に応じて、防虫、防じん、保冷のできる清潔な食品運搬具を備える。
[計器類] 冷蔵、殺菌、加熱、圧搾等の設備には、見やすい箇所に温度計及び圧力計を備える。
     必要に応じて計量器を備える。
■給水及び汚物処理
[給水設備] 水道水又は飲用適と認められる水を豊富に供給できるもの。
貯水槽は衛生上支障のない構造。だだし、島しょ等で飲用適の、水を得られない場合には、ろ過、殺菌等の設備を設ける。
[便所] 作業場に影響のない位置及び構造で、従業員に応じた数を設け、使用に便利なもので、ねずみ族、昆虫などの防除設備、専用の流水受槽式手洗い設備、手指の消毒装置を設ける。
[汚物処理設備] 蓋があり、耐水性で十分な容量があり、清掃しやすく、汚液や汚臭が漏れない。
[清掃器具の格納設備] 作業場専用の清掃器具と格納設備。

 

もう少し具体的には以下の通りです。

 

[床・内壁・天井]
排水のための床勾配は1/50~1/100が適当とされています。床と壁が交わる隅は、丸みをつける。天井は、配管ダクト、照明器具が露出しない事。
[ばい煙などの排気の出し方]
ダクトによって屋外に排気する場合、近隣に迷惑のかからないよう、その高さ及び方向に注意する。フードを設置する場合、天井戸の隙間ができないよう直接つけ、外面は垂直にする。
[ねずみ族、昆虫等の防除]
網戸、自動ドア等で防止する。排水子には、鉄格子、金網等をつける。
[洗浄設備]
1槽の大きさ(内径)のめやすは、45cm(幅)x36cm(奥行)x18cm(深さ)以上
[従業員専用手洗い設備]
手洗い器外径のめやすは、36cm(幅)x28cm(奥行)以上
[更衣室]
専用の衣服、履物、帽子を着用させるための更衣施設等があること。
[保管設備]
食器戸棚、器具保管庫等、必ず戸をつける。
[計器類]
冷蔵庫内及び調理場内に温度計を設置すること。
[給水設備]
貯水槽を使用する水、井戸水等を使用する場合は、年一回以上、水質検査を行い、成績表を一年間保存する。
[便所]
手洗い設備は従業員用同様。床には排水溝を設ける。吸取口、浄化槽のマンホール等が食品取扱設備に影響しない場所にあること。
[汚物処理設備]
汚液、汚臭がもれ、ハエ等の集合産卵場所とならないようにすること。

 

また手洗い場の水栓は、洗浄後の手指の再汚染防止構造となっていることが必要です。

2、飲食店営業に係る特定基準

ここでは飲食店営業に関連する特定の基準を挙げていきます。

 

[冷蔵設備] 食品を保存するために、充分な大きさを有する冷蔵設備を設けること。
[洗浄設備] 洗浄槽は、2槽以上とすること。ただし、自動洗浄機のある場合はこの限りではない。
[給湯設備] 洗浄および消毒のための給湯設備を設けること。
[客席] 客室及び客席には、換気設備を設けること。客室及び客席の明るさは、10ルクス以上とすること。また、食品の調理のみを行い、客に飲食させない営業については、客室及び客席を必要としない。なお、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律又は旅館業法の適用を受ける営業を除く。
[客用便所] 客の使用する便所があること。ただし、客に飲食させない営業については、客用便所を必要としない。なお、客の使用する便所は、調理場に影響のない位置及び構造とし、使用に便利なもので、ねずみ族、昆虫等の侵入を防止する設備を設けること。また、専用の流水受槽式手洗い設備があること。

 

以上が飲食店営業に関する施設基準となります。着工前に以上の項目をしっかりと確認するようにしてください。

 

営業設備の配置図

 

申請の際提出する書類の中に、「営業設備の配置図」があります。これはお店の平面図ですが、店内設備等を全て記入し、客室面積、調理場面積を記入するなど手間のかかる書類となります。また、お店を中心に半径100mの範囲につき、周辺の見取り図を記載します。インターネットでも調べられますが、最新の状態とは限りませんので、実際に歩き確認する必要があります。開店準備をしながらこれらの作業を行うのはなかなか大変なことだと思います。保健所との事前相談を含め、当事務所にお任せください。

営業開始後に必要な届出

営業を開始後も以下のような場合、届出が必要となります。届出には期限が有りますので留意しましょう。

1、変更届

次のような変更を生じた場合には、変更届に営業許可書を添えて、変更のあった日から10日以内に提出する必要があります。

2、廃業届

次のような場合、廃業届に営業許可書を添えて、10日以内に提出する必要があります。
① 営業を廃止したとき
➁ 営業所を移転したとき
③ 営業者が変わったとき
④ 増改築等で営業設備が変わったとき
※➁~④は新たに営業許可が必要となります。ただし③で、相続、法人の合併又は分割の場合は、承継が認められることがあるので、事前相談をしましょう。

3、更新

営業許可期限満了後も引き続き営業を行うには、期限満了前に許可更新の申請手続きを行う必要があります。許可期限満了の約一か月前に以下の書類を提出・申請します。
① 営業許可申請書
➁ 現に受けている営業許可書(営業設備の大要・配置図を添付)
③ 営業許可更新手数料
④ 1年以内に行った水質検査成績書(貯水槽使用水、井戸水使用の場合)
⑤ 食品衛生責任者の資格を証明するもの

その他

酒類の提供について

飲食店を開業し、酒類の提供をすることがあると思いますが、「営業の常態として、通常主食と認められる食事」を提供しているのであれば、酒類の提供は問題なく行えます。ただしバー、居酒屋等、深夜の時間帯に主に酒類を提供するには飲食店営業許可申請と別に、警察署に「深夜酒類提供飲食店」の届出が必要となります。また深夜営業を行えるのは「住居地域」以外の地域となりますので気をつけましょう。

欠格事由について

食品衛生法により、次の欠格事由がある人は許可を得ることができません。
① 食品衛生法に違反して刑に処されてから2年を経過していない者
➁ 飲食店営業を取り消されてから2年を経過していない者
③ 法人にあっては、役員の中に前二項に該当する者がいる場合